ノラ猫
 
「あたしが誰と何しようと勝手でしょ?
 今のアンタにはもう関係ないんだから」


そう言って、冷たく睨みあげる瞳。


その瞳、知ってる。
どこかで見たことがある。


―あたしみたいな女が今までどうやって生きてたか、だいたい想像つくでしょ?―


確かに、そう言われたことがあった。


誰に?
……凛に?


「……アンタ、あたしのこと思い出したの?」
「いや……」
「なら、関係ないじゃん。
 もう放っておいて」


熱くなることもしない、冷静な口調。
それが余計に冷たさを出す。


再び向けられる背中。
そうじゃない。

まだ話は終わってない。


「待てよっ!」


慌ててその腕を引いて、もう一度俺へと向き直させた。
だけどその顔を見て、強い衝撃を受けたのは俺のほうで……


「……」


凛の瞳からは
透明で無垢な一筋の涙が流れ落ちていた。
 
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