ノラ猫
 
光のない瞳から、流れ落ちる涙。

感情がない。
何も映っていない。

だけど流れる涙は、息をのむほど綺麗で……。


「……何?」


凛自身、その涙が流れていることすら気づいていなかった。


どうしてだろう……。

目の前の凛が、儚くて……愛しくて……



「―――っ!?」



気づけば俺は、目の前の凛を力いっぱい抱きしめていた。


「な、にす……」
「……」


抱きしめられた凛は、ただ戸惑い、体に力を入れている。


知ってる。
この温もり……。
この匂いも……。

何度も抱きしめたことのある、この小さな体……。



「離してっ!!」



ドンと押された体。

凛は俺の体を強く突き放した。
 
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