ノラ猫
 
「仕事はさせて」


手元には、いつの間にかノートパソコン。
画面に、いろいろな画像があるのだけは分かった。


「それならいいよ。向こうでやってても」
「いいから。凛は気にせず寝てろ」
「……」


カタカタと聞こえてくる、パソコンの音。

決してそれは不快にはならなかった。


むしろ人の気配が、自分の近くにあるということが妙に落ち着いて……



「智紀って変な人」

「お前が言うな」



初めての扱いに、ただただ戸惑うばかりだった。




何もされない。
何も求めない。


こんなこと、初めて過ぎて、本当に受け入れていいのかさえ迷う。



これが当たり前なんて思っちゃダメ。
人に甘えすぎちゃダメ。



あたしが生きるべき場所は
温かい場所であってはいけないから……。

 
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