ノラ猫
今の俺が、彼女に触れたいと思う。
今の俺が、彼女に笑ってほしいと願う。
今の俺が……
彼女を愛したいと感じる。
それだけで、もう十分なんだ。
その瞬間、さっきまで鉛のように重くなっていた足が、ふっと軽くなっていく。
引き留めるものはもう何もない。
今はただ、彼女を追いかけるだけ。
もう一度……俺のもとへ帰ってきてくれるよう……。
「凛っ……」
走り出す足。
追いかける体。
凛……。
もう一度、俺の胸の中に帰ってきてくれないか……。