ノラ猫
19章 大事なもの
 
どうして……


「はぁっ…はぁっ……」


どうしてこんな……


「はぁっ……っ…」


どうしてこんなに、涙が出てくるのっ……?!


「ぅっ……」


一度溢れ出した涙は、とどまることを知らない。

次々と流れ落ち、
捨てたはずの感情が飛び出そうとしている。


智紀があたしを追いかけたりなんかするから……
智紀があたしを抱きしめたりなんかするから……


もう二度と、感じることがないと思っていた感覚。


智紀の温もり…
智紀の匂い…
智紀の声……



「な、んでぇっ……」



足は勝手に進んでいく。

たどり着いた場所に自分自身が驚いていて……



「もっ……嫌だっ……」



そこは、智紀と出逢ったあの公園だった。
 
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