ノラ猫
「……っ!!」
「智紀?」
その途端、智紀が急に眉をしかめて頭を抱えた。
「ぅっ……はぁっ……」
「智紀っ!?」
尋常じゃないその態度に、慌てて智紀の肩を支えた。
「どうしたの?大丈夫っ?」
「はぁっ…はぁっ……」
そのままなだれ込むようにして膝をついた智紀に、ただうろたえてしまう自分。
もしかして傷口が開いた?
まだまだ本調子なんかじゃないんだっ……。
「待って!今病院にっ……」
「大丈夫、だからっ……」
「でもっ……」
チリンッ……
慌てて誰かを呼ぼうと立ち上がったあたしの腕を、智紀が掴んだ。
それに反応して、手首の鈴が鳴る。
「す、ず……」
「あ……」
智紀は、その鈴を凝視して……
「これ……知ってる……」
その鈴に触れた瞬間、
そのまま時が止まったかのように、動かなくなってしまった。