ノラ猫
20章 導かれた記憶
―これをつけてれば、凛がどこにいるか分かると思って―
鈴に触れた瞬間、
流れ込んだ記憶……。
―凛を導いてくれて、ありがとな―
あの日、俺を凛へと導いてくれた、小さな鈴の音……。
―好き……なのっ……。
智紀が好きっ……大好きっ……―
―どうしよう……。
あたし今、絶対に幸せ―
俺の中で、幸せを噛みしめてくれる儚い女の子。
どうしようもないほど可愛くて
狂いそうなほど愛しくて……
心から愛した
一人の女性。
「智紀?」
心配そうに覗き込んでくる大きな瞳。
どうして忘れていたんだろう。
こんなにも愛していた彼女を……。
彼女は……
「………凛っ…」
俺は、目の前の彼女を
力いっぱい抱きしめた。