ノラ猫
「あ……」
「え?」
凛の小さな手を握って、二人一緒に帰った。
だけどマンションの前には、一つの影が立っていて……
「おっせぇよ」
向こうも、俺たちの姿に気づいて、壁にもたれかかっていた体を直した。
「よかった。
智紀一人で帰ってきたら、友達やめるとこだったよ」
「雄介……」
俺ら二人の姿を見て、心底安心したような笑顔を見せる雄介。
少しだけ気まずさをもったまま、雄介へと向き直った。
「今まで悪かったな……。
やっと思い出せた」
「みたいだな。お前の顔見てれば分かるよ」
言わなくても、雄介には最初から分かっていたらしい。
笑って俺の傍まで来て、じっと俺の顔を見据えた。
「じゃあ、もういいよな」
「あ?……っ!?」
「智紀っ……」
瞬間、にぶい音と、頬に走る痛み。
雄介は、力いっぱい俺を殴った。