ノラ猫
「よかったね」
まるで子供をあやすような、優しい微笑み。
二人の間に何があったかは知らない。
自分から話そうするまで、聞くつもりもない。
凛は一瞬だけ気まずそうな顔をするものの、真っ直ぐな雄介に応えるように微笑んで……
「はい」
力強く、頷いていた。
「うん。やっぱその笑顔が好きだわ」
雄介も、凛の笑顔を見てもう一度笑う。
俺もつられるようにして微笑んで
ここにいる全員が、幸せそうに笑えた。
記憶がなくても
きっとこの三人は変わらなかったかもしれない。
だけどやっぱり、思い出して損はない。
「さーて、仕事戻るかー」
雄介は大きく伸びをし、俺らへと背を向けた。
「誰かさんのせいで、超仕事煮詰まったじゃねぇか。これからしばらく徹夜だな」
「悪かったな」
「お前も。仕事取り戻さないとまずいんじゃねえの?」
入院している1か月以上の間、仕事を全部丸投げした。
だから当然、その間に、別のカメラマンが腕を上げて、俺の仕事が減ったかもしれない。
だけどそんなの、すぐに取り戻してやる。
「俺を誰だと思ってんだよ」
「……はいはい」
俺には守るべき人がいる。
それだけで、この先もずっと頑張れるんだ。