ノラ猫
21章 光のある未来
「ちょっとここで待ってて」
「うん」
次の日になって、凛を連れて病院へと来ていた。
自分の通院のためじゃない。
一人の女の子に会うために……。
最初、凛の不安を取り除くため、一緒に中に入ろうと誘ったけど、凛自身がそれを断った。
自分のためじゃなく、
相手のことを思って、自分は会うべきじゃないと……。
でもやっぱり気にはなるみたいで、結局病院の外で俺を待つことにした。
「はい」
コンコンとノックして、返ってきた返事。
何度か踏み入れたことのある病室。
返事を聞いて、ゆっくりとドアを開けて中を伺った。
「智紀!」
「よ」
そこに寝ていたのは、綾香だった。
「どうしたの?もう仕事終わったの?」
「ああ。今日はスケジュール組みに行っただけだから」
一応は、専属契約を交わしているモデル事務所には顔を出した。
だけどまだ、仕事をすぐにできる状況でもないので、日に少しずつ仕事を入れるよう、調節だけしに行っただけだった。
「よかった……。実は、もう来てくれないかと思ってたんだ」
そう言って。綾香は不安交じりの笑顔を見せた。