ノラ猫
***
―一か月後―
《指輪できたって。取りに行こう》
それは、一本の電話から始まった。
智紀の仕事がお昼過ぎに終わったらしく、ちょうど指輪も出来上がったという連絡を受けたので、途中で待ち合わせて取りに行くことに。
だけど駅に現れた智紀は、歩きかと思ったら会社の車で……。
そしてあたしをジュエリーショップでもない別の場所へと連れて行った。
「横川様、お待ちしておりました」
ついた場所はよく分からない小さな建物。
裏口に回られたせいで、ますます分からない。
そしてあろうことか、智紀はあたしに手を振ってしまうと、あたしだけその場にいた女の人に連れ去られてしまった。
全く意味が分からなくて、
不安でドキドキしながら、されるがまま。
だけどすぐに分かってしまった。
目の前に飾られた真っ白な衣装。
これを着る機会なんて、たった一度しかない。
「では、こちらにお召替えください」
あたしは、純白なウェディングドレスに身を包んだ。