ノラ猫
「あっれー?こんな時間に一人でどうしたの?」
ようやく駅前まで出て、いくらか人のいる通りに出た。
ロータリーの時計を見ると、どうやら2時を回ったとこらしい。
こんな時間に、女の子が一人でいることなんて珍しすぎて、それは男にとってのただのカモにしかすぎなかった。
あたしからしてみても、男はカモにしか過ぎないんだけど。
「電車逃しちゃった?
朝まで一緒に飲む?」
そう言って、明らかにまともに仕事についていなさそうな男が、肩に手をまわしてきた。
途端に感じる嫌悪感。
「やっ……」
思わず、その手を払いのけてしまった。
こんなの、いつものことだった。
ボディタッチも、不必要なほどのコミュニケーションも、男をひっかけるのに必要なことだったから、触られることにも何の嫌悪もなかったはずだった。
なのになぜか、今は男に触れられるのが嫌で仕方がない。
「あ、怖い?大丈夫だって!べつにとって食いやしねぇって」
怯えるあたしを、ヘラヘラと笑って間を詰めようとする男。
ほら……
今日は平日の真ん中なんだから、今逃したら次捕まえられないかもよ……。
ちゃんと笑わないと……
「あ、おいっ!!」
頭とは打って変わって、
あたしの足は勝手に走り出した。