ノラ猫
「はあっ…はあっ……」
全力で走る自分。
意味が分からない。
男が追ってくることはない。
だけど一刻も早く、人のいる場所から逃げたかった。
誰にも声をかけられたくない。
誰にも自分の存在を見つけられたくない。
怖くて
気持ち悪くて
ワケの分からない感情に呑まれていく。
見知らぬ男に触れようとすればするほど、
勝手に体が智紀に抱かれた温もりを思い出していくようで……。
「……意味っ……わかんないっ……」
たどり着いた場所に、さらに困惑した。
そこは……
「なんで……?」
智紀と出逢ったあの公園だった。