ノラ猫
踏みしめた公園は、闇に包まれた空間。
だけどベンチのみが、すぐ後ろにある街灯のおかげで、スポットライトのように光を浴びていた。
こんな深夜に、公園へ訪れている人なんて誰もいなくて
一人怖がることなく中へ踏み入れた。
シンと静まる公園。
ひんやりと冷えたベンチに、そっと腰掛けた。
「……さむ…」
まだまだ春先のこの季節。
日中はいくらか暖かくなってきたけど、夜は上着を着ていても寒いくらいだ。
吐く息は白くて
体温はどんどん奪われていく。
だけど見上げた空は、悲しいくらい星空が綺麗で……
「……」
なんでか、胸の奥がきゅんと切なくなった。
人の温かさなんか忘れてた。
忘れようと必死に心を殺して、なくなっていたと思っていた。
だけどわずかに入り込んできた、智紀の温もり。
勝手に期待して、勝手に裏切られた気分に落とされて……。
「ほんと……バカみたい…」
まだまだ心を押し殺せていない自分に、嫌気がさした。
もう一度汚い世界に足を踏み入れよう。
今度こそ、人に期待なんかしないよう……優しさなんて、人が作り出したただの幻想だと……
そう胸に入れようとしているのに………
「やっと見つけた……」
「……な…んで……」
闇から現れた一つの影。
そこには、智紀の姿があった。