ノラ猫
 
「ったく……手間かけさせんな」


そう言って現れた智紀は、息が切れてて、こんなに寒い季節だというのに額からは汗がにじみ出ている。

信じたくない。
だけど自惚れてしまう。


まさかこんなに必死になって
あたしを探してたと言うの?


「探すっていっても全然手がかりねぇし、ホテルとか入っちまってたらもう手遅れだし……。
 だけど万が一にかけてみた。

 凛ならもう一度、ここに来てるんじゃねぇかって……」

「……」


智紀は、勝ち誇った笑みを向けてきた。

読まれていた自分の行動。
自分自身、半ば無意識でここに来てしまったというのに……。



「凛、帰るぞ」

「っ……来ないでっ!!」



なおも距離を詰めてくる智紀に、思わず叫びながら後ずさった。



「こ、ないで……」



よく分からない怯えが、自分の中で湧き上がってくる。


これ以上智紀に近寄られると、
今までの生き方が否定されてしまいそうになるんだ……。
 
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