ノラ猫
 
《何?にいさん》
《今から俺がすることに逆らっちゃいけないよ?》
《え?》


最初は、意味が分からなかった。

そっと触れてくる手。
ただのスキンシップかと思っていたら、その手はだんだんエスカレートしていって……


《ちょっと待ってっ……》
《いいから黙れよ!お前は俺の言うことだけを聞いてればいいんだよ。
 凛は俺だけが頼りなんだろ?》
《……》


その言葉には、逆らえない力があった。


孤独な自分。
全くの他人の家に住むことになって、冷たい家庭環境。
唯一優しくしてくれているのは、目の前の義兄のみ。

あたしはただ、義兄のされることに、歯を食いしばって耐えるだけだった。


夜になるとやってくる、悪夢のような時間。

これがおばさんやおじさんにバレてはいけないことだと、中学生ながらに思った。


大丈夫。
ただちょっと気持ち悪いだけ。

性の知識がなかったあたしは、この先に待ち受けるものがなんなのかまだ分かっていなくて……


中3になってしばらくしたある日……


《い、たっ……やだっ……やだっー!!》
《黙れっつってんだろ!》
《ぅっ……ぁ……》


この日……

あたしは処女というものを喪失した。
 
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