ノラ猫
 
その日からが本当の悪夢の始まりだった。


家に帰れば、義兄の玩具になる。
無駄に広い家は、あたしの部屋も義兄の部屋も、おばさんとおじさんの部屋から遠い。

それにバレてはいけないと感じているのは、自分のほうだったから……。


おばさんは、義兄を溺愛している。
もしこのことがバレたら、責められるのは自分だ。

間違いなく、あたしを娼婦扱いをして、この家から追い出すだろう……。


まだ義務教育という身のあたし。
家を飛び出す勇気も、ほかに頼る大人もいない。

自分の存在を許されるのは、この家のみ……。



《無駄口叩くんじゃねぇ。
 なんのために、今まで優しくしてやったと思ってんだよ》



そう。
最初から……優しさなんて存在していなかったんだ……。


義兄はあたしを油断させようとしただけ。
あたしが義兄に逆らえない環境を作っていただけ……。



《お前は俺の玩具なんだからな》



あたしに……

人権なんていうものは存在しない。

 
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