ノラ猫
 





「あ、れ……?」


ふと気が付くと、辺りは暗くなり始めていた。

どうやらベンチに座ったまま、眠ってしまったらしい。


肌寒く感じるこの季節。
さすがに長時間寝てしまった目覚めは、寒さを感じる。

さらに空を見上げると、


「……雨…」


どんより雲が広がり、雨が今にも降り出しそうだった。

そう思っているのもつかの間で、ポツリと感じた頬へとの滴。


瞬く間に、雨は強さを増し、地面を濡らしていった。



「……」



だけどあたしの足は動くことなく
ベンチに座り続けたまま。


あぁ、このまま……
雨となって流れてしまいたい。



この日、本気でそう思った。
 
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