ノラ猫
 
「な…にそれ……」
「不満?」
「そういう意味じゃない、けど……」
「けど?」
「……」


人をからかうように、言葉を催促してくる。


不満とか、そういうことじゃない。
幸せになりたいとか思ってないのに、そんなことを押し付けられたって困るんだ。


「本当は、幸せになりたいんだろ?
 もう一人ぼっちは嫌なんじゃねぇの?」

「……」


そんなことない。

独りだって平気。
だからあたしはこの家を出たんだ……。

もとの人生に戻ろうと……。




でも今あたしが、ここにいる意味は……?




「いい加減、正直になれよ。
 俺が凛を連れ戻しに来た意味分かってる?」

「……知らない」



「凛と、もっと一緒にいたいって思ったからだっつーの」



ああ、なんでだろう……。

胸の奥が、きゅっと締め付けられるように苦しい……。
 
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