ノラ猫
5章 ひとときの幸せ
「……」
ふと、目にかかる光を感じて、瞼を開けた。
部屋はまだ薄暗くて、感じる光はカーテンの隙間から入り込む朝日のようだった。
いつもと違う視界。
うつるのは天井ではなく、座っているときと同じような風景。
右肩が温かくて、ゆっくりと首を傾けると……
「ぁ……」
思わず、小さく声が漏れた。
温かい原因は、同じようにソファーに座ったまま眠っている智紀の存在で……
寝ちゃったんだ……。
昨日あたしたちは、ソファーで話している状態のまま、一緒に眠ってしまったようだった。
なんだかすごく不思議な感覚だった。
目を覚まして、隣に男の人がいるのは慣れていること。
だけど今までとは全く別の感覚。
初めて過去を打ち明け
信用してみようと思えた。
見上げた智紀の顔は
女の人よりもずっと長いまつ毛。
シミひとつない白い肌。
サラサラな栗色の髪。
男の人が綺麗だと、この日初めて思った。