ノラ猫
なんだろう……。
この感覚。
感じたことのない、スッとした感じ。
今までと同じ世界なのに
どこかそれは鮮やかに見えて……
「……材料…買いに行かなくちゃ」
気づけば、スーパーへ向かう足取りさえも、軽くなっていた。
何を作るか考えて
カゴに詰まっていく野菜やお肉たち。
二人分の量をカゴに詰めるのは、なんだか妙にくすぐったかった。
……買いすぎたかも。
二人分と言いながら、
男の人だったら自分の考える量よりもいっぱい食べるのかも……なんて考えたら、量も次々と増えてしまって、気づけば両手いっぱいにスーパーの袋をかかえてしまっていた。
帰ったら下準備して……。
絶対に智紀をうならせてやるんだから……。
ぶつぶつと勝手に戦闘モード。
だけどどこかふわふわした気持ち。
それがまだ「幸せな気持ち」かどうかも分からない。
だけど、世界がずっと鮮やかなのは、いい加減自分でも気づいていた。
「…………凛…?」
まさかそれを、一人の人物に見られていたなんて、考える由もなかった。