ノラ猫
 
体に感じる冷たい雨。
だけど不思議と、体は熱かった。


寒さで体が震えるのに
自分の両手で抱きしめた体は驚くほど熱い。


「っ……」


頭がぼーっとする。
視界がボヤけるのは、きっと雨のせいだけではない。


久々に感じるこの状況が
いったい何を示すのか分かっていた。



もしもこのまま、誰の救いも求めず
この強い雨に打たれ続けていたのなら

肺炎にでもなって、そのまま眠ることができるだろうか……。



心配する人はこの世界に誰もいない。
きっと今、救急車で誰かに運ばれたとしても、あたしの身元が分かるものはない。


連絡が行く先も分からず
身元不明のまま、この世界から消える。


ああ、きっとそれも悪くない。


自然と笑みがこぼれて、
ふっと体の力を抜いた瞬間だった。





「なあ、風邪ひくよ?」


 
< 6 / 258 >

この作品をシェア

pagetop