ノラ猫
体に感じる冷たい雨。
だけど不思議と、体は熱かった。
寒さで体が震えるのに
自分の両手で抱きしめた体は驚くほど熱い。
「っ……」
頭がぼーっとする。
視界がボヤけるのは、きっと雨のせいだけではない。
久々に感じるこの状況が
いったい何を示すのか分かっていた。
もしもこのまま、誰の救いも求めず
この強い雨に打たれ続けていたのなら
肺炎にでもなって、そのまま眠ることができるだろうか……。
心配する人はこの世界に誰もいない。
きっと今、救急車で誰かに運ばれたとしても、あたしの身元が分かるものはない。
連絡が行く先も分からず
身元不明のまま、この世界から消える。
ああ、きっとそれも悪くない。
自然と笑みがこぼれて、
ふっと体の力を抜いた瞬間だった。
「なあ、風邪ひくよ?」