ノラ猫
「と……もき……」
息を切らしながら、走ってきた人は、今のあたしにとって限りなく傍にいたい人。
すぐに智紀のもとへ駆けていきたいのに
足はいまだに金縛りにあっている。
「誰?凛の何?」
目の前のにいさんは、後ろにいる智紀のことを冷ややかな声で尋ねてきた。
誰と聞かれても
答え方が分からない。
智紀はあたしの……何?
「答えないなら、俺のとこにおいでよ」
「ゃ……」
再び動き出した手に、ビクリと体が震えた。
だけどそれを遮るように、あたしの体は正反対へと引かれた。
「気安くコイツに触んな」
気づけばあたしは、智紀の腕の中へいて……
「今のコイツに触っていいのは、俺だけだから」
「……」
火花を感じるほどのにらみ合いが、二人の間でされていた。