ノラ猫
 
「何か、用ですか?」
「用なんて一つに決まってるだろう。
 いい加減、家に帰ってきなさい」
「な……」


予想外の言葉。

どうしてこの人は、今さらそんな言葉を言ってくるんだろう……。

今までだって、家にいたって一週間に一度、顔を合わせばいいほうだったのに……。


「なんで、ですか……。
 あたしなんて、おじさんにとってただの気まぐれの養子でしょ?」

「そうだな。
 正直、私にとって凛が家にいようといなかろうと関係ない」

「……」


やっぱり、返ってきた言葉は愛情の一かけらもない。

それならどうして、あたしなんかを養子として引き取ったんだろうか……。
いっそのこと、それなら施設に入れられたほうがよかった……。



「仕方ないだろう。
 悟がお前を欲しいと言ってるんだ」

「え?」

「お前は最初から、悟が欲しいと言ったから、養子として迎え入れられたんだよ」

「――っ」



初めて聞かされた真実。


そうか、あたしは……

最初からにいさんの玩具として存在が許されていたんだ……。
 
< 84 / 258 >

この作品をシェア

pagetop