ノラ猫
ぐにゃりと世界が歪んで
色が消えていく……。
あたしが生きていく道は、玩具になること。
そうなることは、最初から決められていた。
「凛、車に乗りなさい」
あたしを帰るよう、促された言葉。
後部座席が開いて、乗れと言われる。
嫌、だ……。
だってもし、この車に乗ってしまったら……
きっと今度こそ、あたしはあの家から出ることを許されない。
「嫌…です」
必死に拒否する言葉は、あたしが思っている以上にか細い声。
怒鳴って逃げ出したいのに
息をするのさえも困難なほど、世界が揺れている。
「あまり手荒なことはしたくないんだがな」
「え……?」
そう言った瞬間、おじさんが目で合図をするかのように誰かを見やった。
それと同時に、助手席からは別の誰かが降りてきて……
「な、にっ……?やだ!やめてっ……!!」
その男に、腕を掴まれ、無理やり車に押し込まれそうになった。