ノラ猫
「あの男がどんな言葉をお前に吐いてるか知らないけど、そんなのただの戯言。
男がどんな生き物なのか、お前が一番よく分かってんだろ?」
「……」
「あいつはお前の心も支配して、完璧なドールを作りたいだけだ。
それにまんまと乗せられてんじゃねぇよ」
散々自分を調教してきたこの男の声が
グシャグシャと音を立てて心をかき乱していく。
そんなことない。
智紀はそんなこと考えてない。
純粋にあたしを救おうと……
優しさを向けているだけだって……
「お前、自分がどんだけ汚れてるか分かってんだろ?」
「―――」
でもそれだけは、逃れられない事実。
「その体、作り上げたのは俺。
お前を心から必要としてるのは俺だけ。
あの男は、単純に欲望の吐口が欲しいだけだよ。
じゃなきゃ、お前みたいな数えきれない男を相手している女の体なんて、誰も欲しがらねぇだろ」
そんなこと、絶対にないのに……
どうして何も、言い返すことが出来ないんだろう……。