ノラ猫
愛なんて知らない。
優しさなんて知らない。
今彼が、こんなにもあたしに救いの手を差し伸べてくれるのは
きっとそこに見返りがあるから……。
「も……嫌だ…よ……」
夢か現実か
どちらかとも分からない悲痛の叫びが口から洩れ、
男が抱きかかえる少女を見下ろした。
「面倒なもん、拾っちまったかな……」
口ではそう言いつつも、
儚く、今にも消えてしまいそうな少女を、なぜか放っておけなかった。
雨が降り注く夜、
一人の青年が一匹のノラ猫を拾った。