ノラ猫
「不釣り合いでしょ。今さら綺麗になれるなんて思ってんの?」
容赦ない言葉のナイフ。
ドクドクと、心という感情が流れ落ちていくようだ。
「これ以上凛が智紀さんを振りまわしたら可哀そうだよ。
凛が関われば関わるほど、智紀さんは危険な目に合っていくよ?」
「……」
誰が危険な目に合わせるんだ、とか……
そんなこと、もうどうでもよくなっていた。
あたしが関わるから、智紀は日常を送れなくなる。
穢れたあたしが、智紀を黒く滲ませていく……。
「凛。
そろそろ智紀さんを解放してあげようか」
その言葉に、一筋の涙が零れ落ちて
小さく頷くことしか出来なかった。
「いいこだね、凛。
さすが俺の凛だ」
優しく撫でられる頭。
愛しさと憎しみの両方を兼ね揃えた、気持ちの悪い声。
「じゃあ、電話しな」
渡された携帯に、あたしは頭の中に暗記されていた智紀の携帯をプッシュした。