声が出なくても〜その想いは、ココロで届く〜
出会い

葉月 奏音


声。私がこの世でいちばん嫌いなもの。
私がこの世でいちばんの希望とするもの。
声、出ないかな。いつもいつも、朝起きると声を出そうと喉に力を入れる。

「…………ッ」

今日も声が出なかった。

*〜*〜*〜*〜*

制服を着て、リビングに行く。
ガチャとドア開ける。

「奏音(かなね)、おはよう。」

お母さん、おはよう。

声が出ないから、ココロの中で挨拶する。お母さんに挨拶がわりに、ニコッと笑顔を向ける。

「ご飯、パン?」

“ご は ん”

口パクをして、お母さんに伝える。

「わかったわ。」

テレビをつける。

『今日の天気は雨のち曇り。傘をお忘れないようご注意下さい。また…』

テレビの中の天気予報士さんが、淡々と喋り続ける。

「あら、今日雨?奏音、傘忘れないようにね。」

コクンと頷く。

「お母さん、今日夜勤だから。ご飯、悪いんだけど自分の分作っておいて。」
また、頷く。

お母さんの職業は看護師さんだ。優しくて、お母さんにぴったりの職業だ。

窓をみると、灰色の雲が空を覆っていた。


学校につくと。
「奏音〜!おはよう」
“お は よ う ”

「今日、嫌な天気だよね〜。マジ、テンション下がるわー」
うんうんと頷く。

私に声をかけてきた友達、咲子。サバサバしてて、中学時代からの友達。一番の理解者。

「奏音、課題やってきた?」

首をたてにふる。

「まじ!? さっすが、優等生!」

話しながら来たから、もうあっというまに教室だ。

教室に入って、荷物の整理をすると。

「奏音、晴山が廊下にいるよ」
咲子がいった。

晴山くんに目がすぐにいってしまった。

晴山くんをみると、ドキドキして。これが恋なのかな?

「よかったね、今日もみれて。」
コクンと頷いた。
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop