声が出なくても〜その想いは、ココロで届く〜
出会い
葉月 奏音
声。私がこの世でいちばん嫌いなもの。
私がこの世でいちばんの希望とするもの。
声、出ないかな。いつもいつも、朝起きると声を出そうと喉に力を入れる。
「…………ッ」
今日も声が出なかった。
*〜*〜*〜*〜*
制服を着て、リビングに行く。
ガチャとドア開ける。
「奏音(かなね)、おはよう。」
お母さん、おはよう。
声が出ないから、ココロの中で挨拶する。お母さんに挨拶がわりに、ニコッと笑顔を向ける。
「ご飯、パン?」
“ご は ん”
口パクをして、お母さんに伝える。
「わかったわ。」
テレビをつける。
『今日の天気は雨のち曇り。傘をお忘れないようご注意下さい。また…』
テレビの中の天気予報士さんが、淡々と喋り続ける。
「あら、今日雨?奏音、傘忘れないようにね。」
コクンと頷く。
「お母さん、今日夜勤だから。ご飯、悪いんだけど自分の分作っておいて。」
また、頷く。
お母さんの職業は看護師さんだ。優しくて、お母さんにぴったりの職業だ。
窓をみると、灰色の雲が空を覆っていた。
学校につくと。
「奏音〜!おはよう」
“お は よ う ”
「今日、嫌な天気だよね〜。マジ、テンション下がるわー」
うんうんと頷く。
私に声をかけてきた友達、咲子。サバサバしてて、中学時代からの友達。一番の理解者。
「奏音、課題やってきた?」
首をたてにふる。
「まじ!? さっすが、優等生!」
話しながら来たから、もうあっというまに教室だ。
教室に入って、荷物の整理をすると。
「奏音、晴山が廊下にいるよ」
咲子がいった。
晴山くんに目がすぐにいってしまった。
晴山くんをみると、ドキドキして。これが恋なのかな?
「よかったね、今日もみれて。」
コクンと頷いた。