うそつきは恋のはじまり
うそつきの恋

◇1.






誰だって、年齢が大人になれば中身も自然と大人になるものだと思ってた。

けど、中には幼いままの人もいるのだと実感する。



そんな私は、現在30歳。





「っ…ぷはぁ!!」



11月頭の、とある平日の夜。

東京の片隅にある会社近くの居酒屋で、私はグビッグビッとビールを飲み干し、空になったジョッキをドン!とテーブルに力強く置く。



「もうねぇ……人はしょせんひとりなのよ、誰かといっしょに、愛し合おうなんて考えがそもそもの間違いなのよ……」

「はいはい、そうねー」

「男なんて……男なんてねぇ……っ〜……うわぁぁぁーん!!なんで別れたいなんて言うのよぉぉぉぉー!!!」



それは、誰がどう見ても立派な酔っ払い。

真っ赤な顔と、危うい呂律でいきなり泣き出す私に、目の前の二人は呆れたようにグラスの中のビールを一口飲んだ。


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