うそつきは恋のはじまり




「あー、寒い〜……」



その日の夜。彼方くんと合流し、食事を終えた私たちはふたり駅前の通りを歩いていた。金曜日の夜だからか、飲食店の並ぶ通りはにぎやかだ。

日に日に厳しくなる寒さに、長いマフラーに顔をうずめる私の隣で、彼方くんも真っ白な息を吐き出す。

手と手はしっかりとつないだまま。



「七恵、明日は休み?」

「うん、土日休みだから。彼方くんは?」

「レポートだけ出しに行く。明日の12時が期限だけど、さっき塾でギリギリ終わったんだ」



レポート……大学生も大変だなぁ。勉強してバイトもして、それでもってこうして過ごす時間も作ってくれるんだもんね。

彼の気持ちが嬉しくて、つなぐ手につい力が入る。



「だから、明日はそんなに早くないからゆっくり過ごせるし……今日、七恵の家行ってもいい?」

「え!?」



それはつまり、うちで遅くまで過ごす、もしくは泊まるということで……。

そういう関係に、なるかもしれない!?



「う、うん!いいよ!相変わらずぬいぐるみしかないけどっ……あ、じゃあDVDでも借りていかない?見たかった映画のDVD出たんだ!」

「じゃあ寄っていこうか」



彼方くんと近くのレンタルショップへと入ると、店内にずらりと並んだDVDを見て選ぶ。


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