うそつきは恋のはじまり
ごめんなさい、彼方くん……DVDは口実です。
本当は、“ふたりきりの部屋”という空気をどうにかしようと誤魔化したいだけです……!!
だって、相手は未成年とはいえ付き合っている男女がふたりでいればそうなるだろうし、私もまんざらではないわけで……。
けどダメだって思う気持ちももちろんあるし、そもそもふたりでいることに緊張もしてしまう。ドキドキしてしまう。
……って、これじゃ私のほうが18歳だよ!精神年齢10代だよ!
「七恵?どれにする?」
「え!?う、うん!?」
『見たかった映画のDVD』なんて咄嗟に言ってしまった言い訳に、どうしよう、どれにしようと焦りを隠しながら選ぶ。
「あれ、川崎?」
「へ?あっ、矢田くん」
すると、背後から声をかけてきたのはスーツ姿の男性。高校の頃の同級生・矢田くんだ。
高校の頃からよく話し、連絡先は交換してはいないけれど同窓会や飲み会でたまに顔を合わせれば話をするという微妙な距離感の彼は、仕事帰りらしい格好で「よっ」と右手をひらひらとさせる。
「仕事帰りか?」
「うん。矢田くんも?」
「そうそう。明日休みだから、一人でDVDでも見るかなって」
海外ドラマのDVDを何本か見せながら笑うと、その視線は不意に私の隣の彼方くんへと向かう。