うそつきは恋のはじまり
「あれ、お前弟いたっけ?顔似てねーな」
「え!?いや、彼は……」
案の定言われてしまった『弟』。それに対しどう答えるべきか、一瞬迷ってしまう。
彼氏、って言ってもいいのかな。でも……彼方くんはあんまり言ってほしくなかったりするかも?どうしよう、えーと、
「弟じゃなくて、彼氏です」
そんな私の迷いをばっさりと切るように、彼方くんは言い切った。
「か、彼氏?へー……そっか。い、いいよなぁ、仲良さそうで」
驚きを隠しきれない様子で頷くと、矢田くんは「じゃあまたな」と去って行く。
「俺たちも行こうか。見たいものみつけた?」
「えっ、あっうん……」
びっくりした。『彼氏』って、言ってくれた。彼方くんが、私の『彼氏』って言い切ってくれた。
驚いたけど、嬉しい。私が躊躇ってしまうことも、彼はすんなりと言ってしまうから安心できてしまう。
「っ〜……好き!彼方くん大好き!」
「へ?どうしたの?」
込み上げてくる愛しさを抑えきれず、彼の腕にぎゅううっと抱きついた私に、彼方くんは首を傾げながら笑い、私の頭をよしよしと撫でてくれた。