うそつきは恋のはじまり
「……し、失礼しまーす……」
そして、彼方くんの頬へちゅ、と小さくキスをした。
し、してしまった!けどいいよね、寝ているもんね!
恥ずかしくなりながら彼の顔を眺めれば、その顔は先程と変わらないすこやかな寝顔。……のはずが、みるみるうちに頬を染め笑いを堪える表情となる。
……って、え?なに、その反応。それって、まさか……。
「……お、起きてます……?」
「……うん、ごめん」
私の問いかけに答えながら目を開く彼は、どう見ても今目が覚めたふうではなく先程から起きていたのだろう様子。
ってことは、つまり……キスしたの、バレてるー!!!
「ご、ごめんなさい!すみません!!寝込みを襲おうとしたわけではなくて、ついちょっとやましい心が出て……あっ、でも痴女じゃないから!!彼方くんがかわいすぎて触れたくなっただけでっ……」
「いや、ごめん。俺こそ七恵の行動見たくて寝たふりしてたんだけど……まさかキスされるとは思わなくて、さすがに照れた」
彼方くんははずかしそうに髪をくしゃくしゃとかくけれど、当然こちらのほうがもっと恥ずかしい。たちまち耳まで真っ赤になってしまう。
「わ、七恵真っ赤」
「だ、だって……!」
「嬉しかったよ?七恵からのキス」
そんな私を見ておかしそうに笑い体を起こす彼方くんに、続いて私も体を起こした。