うそつきは恋のはじまり
「ん?」
なんだろう。疑問に思い手を伸ばすと、それは黒いUSBメモリ。私のじゃない、ってことは……彼方くんのかな?
大事なものだといけないし、と思い一応連絡しておこうと携帯に電話をするものの、彼方くんは急いで学校へ向かっているためか出ない。
「ま、いっか。学校終わったらまた会えるだろうし、その時にでも渡し……」
そうメモリを見ると、そこには『提出課題データ』と丁寧な字で書かれたシールが貼ってある。
あらやだ、彼方くんって字きれい。顔も心も美しい子は、字まで美しいんだねぇ……。うふふ、と笑いながらメモリを見つめて、ふと気付く。
あれ、待って。『提出課題』って、つまり……あれ?
……これ、忘れちゃまずいんじゃない?