うそつきは恋のはじまり
『あ、もしもし七恵?ごめんね、電話出れなくて。さっき学校についてさ、どうかした?』
「あー、えーと……あのさ、彼方くんが今日提出する課題って……黒いUSBメモリで持ち歩いてたりする?」
『え?なんで知ってるの?……あれ?それどこいったんだろ』
電話の向こうでは、彼方くんが鞄のなかをがさごそと探る音がする。
いいえ彼方くん。そこにはありません。あるはずがありません。なぜならそれは、今私が持っているから。
タクシーをとばして大学前までやってきた、私が今、持っているから。
ど、どうしよう……来てしまった、大学まで来てしまった!!
緊張から出る冷や汗をダラダラと流しながら、立ち尽くす私の目の前には広い敷地に『青島大学』と書かれた、立派な建物。
とりあえず手遅れになる前にと、急いで着替えてタクシーを飛ばして……とやって来た彼方くんの大学。
着いた頃に彼方くんとはちょうど連絡がとれ、どうやらこのメモリは本当に課題のメモリだったらしく、一通りを伝えた私に『今行くから待ってて』と電話を切った彼方くんを待っている……のが、現在の状況。