うそつきは恋のはじまり



ちら、と周りを見れば、キャンパス内を歩く若者たち。

現役の子が多いのか、みんなどう見ても私より10歳は下……この寒いのに、ミニスカートに生足できゃっきゃと楽しげに歩いている。



ここがいつも彼方くんがいる学校、かぁ……。うん、とりあえず、とにかく、居づらい……!!

大丈夫かな、不審者だと思われないかな。どう見ても浮いているであろう自分に、通すがる先生や生徒たちの視線がこちらに向いているのではないかと自意識過剰になってしまう。



「七恵!」



すると向かいの建物からは、駆け足で彼方くんがこちらへと来た。



「彼方くん!よかった、これ……」

「これこれ!ないと思ったら忘れてたんだ……ごめん七恵!本当にありがと!」

「どういたしまして。じゃあ私はこれで……」



『帰るね』と言いかけ体の向きを変えようとした私に、彼方くんはくいっと服の裾を引っ張り引き止める。



「待って。せっかくだし、一緒に帰ろ。これ出したらすぐ帰れるから」

「へ?でも……」

「そこにカフェテラスがあるんだけど、そこだったら内外の人関係なく使えるから待ってて」



でも、私がここにいるのは違和感が……。そう言いかけたけれど、『ね?』と言い聞かせるようなかわいらしいその笑顔に、つい自然と「うん」と頷いてしまう。

そしてメモリを手に建物へと駆け込んでいく彼方くんに、私は言われた通り入口近くにあるカフェテラスへと入った。


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