うそつきは恋のはじまり
「いらっしゃいませ、ご注文はいかがいたしますか?」
「ホットのカプチーノで」
注文をし壁際の適当な席につく。横目で見渡せば、広々とした店内には生徒であろう子たちがまばらに座っている。
すごいなぁ、街のカフェと変わらないや……。青島大学ってこのあたりで一番大きい学校だもんね、当然設備もいいか。
納得しながら、カップの中の熱いカプチーノをふぅと冷まし、一口飲んだ。
「あれ、七恵ちゃん?」
「え?」
呼ばれた名前に顔を上げると、そこにいたのは金髪の男の子と黒縁メガネをかけた男の子。
あれ、この子たち……とよくよく思い出せば、以前電車で行きあったことのある彼方くんの友達であることに気付いた。
「あっ、彼方くんの友達の……」
「永瀬でーす。んで、こっちのメガネが多田ね」
「メガネ言うな」
一度会っただけにも関わらず顔を覚えていたらしい。人懐こい様子の金髪の男の子・永瀬くんと、落ち着いた雰囲気のメガネの男の子・多田くんはカップとサンドイッチの乗ったトレーをテーブルに置き、至って自然に私を挟むように両隣へと座った。
「めずらしいですね、大学来てるなんて」
「うん、彼方くんの忘れ物を届けに来て、ついでに待ってるの」
「あぁ、そういやあいつさっきデータがないって騒いでたっけなぁ。間に合ったのかー」
多田くんからの問いかけに答えると、すぐ隣では永瀬くんが納得しながらホットコーヒーに砂糖を二本入れた。