うそつきは恋のはじまり
「ふたりも課題の提出に?」
「いや、課題は終わってるんだけど。それ以外にもいろいろあって、大学生も大変なんすよー」
「そうなんだ、お疲れさま」
明るく笑う永瀬くんと、静かそうな多田くん。ふたりは対象的で、彼方くんと比べても違うタイプ。
だけどなんとなく近い雰囲気を漂わせていて、仲がいい理由がわかる気がする。
カップの中身をまた一口飲んでいると、多田くんからはじっと視線を向けられた。
「そういえば、七恵さんって本当は30らしいですね」
「ぶっ!!」
なっ、いきなりなにを!?
突然の年齢の話に、思わずカプチーノをふきだしてしまう。
「か、彼方くんから聞いたの……?」
「はい。会話の流れで、ポロッと」
「いやー、あれはびっくりしたよなー!だって20歳だと思ってたのに30歳って!」
純粋に驚いた気持ちを現しているのだろう永瀬くんの言葉に、きっと悪気はないんだと思う。けど、嘘をついていた側としては耳が痛い。
苦くなってしまいそうな表情を隠すように、紙フキンを口元に押し当てる。