うそつきは恋のはじまり
「か、彼方くん……それについて何か言ったりしてた?」
「いえ全然、『年上には年上なりの悩みがあるみたい』って感じのことくらいで」
よかった……友達に愚痴られてはなかった。知らないところで『あいつ嘘ついててさー』なんて言われていたらと思うと、さすがにヘコむもんね。
問いかけに対する多田くんの答えに、ほっと心をなで下ろす。
「けど、それ以上にびっくりしちゃうのがそのあとの彼方の一言だよなぁ」
「え!?なに!?」
ニヤ、と笑いながら言った永瀬くんに、多田くんも思い出すように「あー」と笑った。
な、なに?びっくりしちゃうような一言って……?
こわい、けど気になる、とうずうずとする私に、ふたりはますますおかしそうに笑う。
「『でも歳なんて関係ないくらい、可愛くて仕方ない』ってさ」
「え……?」
「素でノロケちゃうんだもんなぁ、あれは驚くわ」
『歳なんて関係ないくらい、可愛くて仕方ない』……なんて、そんなことを知らないところで言っていてくれた?
あぁもう、嬉しいなぁ。嬉しくて、愛しくて、心があたたかくなるよ。
「七恵、お待たせ……ってうぉっ!永瀬に多田!?」
「よう彼方、お疲れ〜」
「……余計なこと言ってないだろうな」
「余計なことは言ってない。余計なことは、ね」
戻ってきた彼方くんはふたりの姿を見て驚くと、釘を刺すように言う。そんな彼らの姿に、つい笑ってしまう。
日々を過ごしていく中で、彼方くんの知らない一面をひとつひとつ知ることが出来て、嬉しい。
こうして少しずつ近付いて、ふたりは恋人になっていくのだろう。
これから、一歩ずつ。