うそつきは恋のはじまり
ひどい、でもサークルなら仕方ないのかなぁ。でも会いたかった……一緒に過ごしたかった……。
でも『クリスマスくらいで』って思われても嫌だなぁ。大人なら身を引いて納得するべき?
「おーい、川崎に吉木。お前ら今度のクリスマス親睦会どうする?今出欠確認してるんだけど」
そこにやってきたのは、名簿を手にした北見さん。毎年恒例のクリスマス親睦会……つまりは忘年会を兼ねた飲み会の参加不参加を聞いて回っているらしく、名簿には丸とバツがまばらについている。
「私参加で。どうせ予定もないですし」
意外と付き合いのいい莉緒は、こういう飲み会にはいつも参加だ。莉緒の回答に北見さんは名簿に丸をつけた。
「了解。川崎は……ってお前はデートか。じゃあ欠席な」
「……行きます……」
「へ?」
「私も予定ないですもんーーー!!」
彼が手にする名簿に自らマルを書き殴る私に、莉緒は笑い北見さんは意味がわからなそうに戸惑う。
本当は、一緒に過ごしたい。だけど、『大人なのに我慢もできないんだ』ってがっかりされるのはいやだし、若いうちの限られた時間でしか出来ないことを私が奪っていいとも思えない。
だから、平気なふりをして打ったメール。
『うん、いいよ。私も会社の飲み会があるから!お互い楽しんでこようね』
こういう時の私は、相変わらずうそつきのままだ。