うそつきは恋のはじまり
そしてそれから数日。年末近くということもあり私も彼方くんも忙しく、それまでの頻度が嘘のように会えない日々が続いた。
彼方くんの予定がなくなったりしないかな、なんて考えては身勝手な自分にがっかりする。
そして、迎えた金曜日。12月25日の、クリスマス。
「かんぱーい!メリークリスマース!」
「乾杯ー!」
会社から数駅移動したところにある居酒屋の大部屋で、にぎやかな声とともにその場の全員はグラスを合わせる。
毎年恒例、クリスマス親睦会の始まりだ。
「っ……ぷはぁ!やっぱり生ビールが最高!!」
「相変わらずよく飲むねぇ、七恵は」
「うん!飲まなきゃやってられないからね!」
開始早々、大ジョッキのビールを空にすると、テーブルにジョッキをどんっと置いた。
「いい飲みっぷりだな〜川崎ぃ、ところで去年は『彼氏とデートなんで!』って欠席だったのに今年は出てるってことは……」
「彼氏は居ますから!付き合いたてのラブラブな彼氏が!今日はたまたま忙しいだけで!!」
『失恋したのか』と言いたげに寄ってきた部長に一言で返すと、それ以上からかえなくなった部長はすごすごと他のテーブルへと移っていく。