うそつきは恋のはじまり



結局あの日から彼方くんとは会えていなくて、電話で『ごめん』って言われた時も本当のことはなにも言えなかったんだよね……。



『クリスマス、本当にごめん。先輩との付き合いもあって、断れなくて』

『ううん、全然平気!楽しんできてね、私もすっごい楽しんで来るから!』

『あんまり飲み過ぎないでね。早めに帰れそうだったら、連絡する』



そこでちゃんと『やだ、一緒に過ごしたい』って言っていればよかったんだろうけど、そんなワガママも言えるわけなく……。



「……はぁ」

「なに、七恵。まだあの子のことで落ち込んでるの?いい加減切り替えなよ」

「わかってるんだけどさ……」



深い溜息をつく私に、莉緒はテーブルの上の鍋を小皿に取り分け手渡した。



「吉木、飲み物足りてるか?何か頼む?」

「吉木さん、飯ちゃんと食ってる!?こっちにいろいろあるよ!」

「莉緒先輩こっちで話しましょうよ〜!あ、川崎先輩はそこでゆっくりしてていいんで!」



すると、わらわらとやって来た他の部署の男性陣。皆彼女なしで、美人な莉緒にぞっこんなのだろう。『吉木』『吉木さん』『莉緒先輩』と莉緒に声をかけ、少し離れた位置にある輪へ莉緒を連れて行った。



相変わらず莉緒はモテるなぁ……!そしておまけに私はちゃっかり省かれた。

まぁね、確かに莉緒くらい美人でスタイルよくて色気ムンムンだったら、男性陣も寄ってたかるよ。わかるよ、その気持ち。

だからって、そこまで明らかに扱いに差をつけなくてもいいとも思うけど……!


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