うそつきは恋のはじまり



「はぁぁ〜……」



席に一人となり、こぼれた深い溜息からはビールの匂いがした。



今頃彼方くんは、私のことなんて忘れて楽しんでるんだろうなぁ……。もしかしたら莉緒みたいに、異性に囲まれてモテモテかも!?

そうだよね、彼方くんくらい綺麗な顔なら、女の子も寄ってたかるよね。けど、モテるなんて話本人からは聞いたことがない。いや、本当にモテる人は自分からわざわざ言ったりしないか。



でも例えば、自分が大学生として同じクラスに彼方くんがいたら……絶対惚れるよね。キャーキャー言っちゃうよね。

いや、寧ろ美しすぎて近寄れないかも。遠くから眺めるだけで崇拝して終わるかも……!!

恐るべし、彼方様……!!



「おーい川崎……ってなに拝んでんだよ」

「彼方様が、近付けないほど美しいから……!!」

「は?」



妄想のしすぎでついその場で両手を合わせる私に、ビールのおかわりを運んで来た北見さんは気味悪そうにこちらを見てジョッキをテーブルに置くと、私の向かいに腰をおろす。


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