うそつきは恋のはじまり
そして、それから4時間ほどが経っただろうか。
23時を迎え、あと1時間でクリスマスが終わろうとしている頃、私の姿は居酒屋の前にあった。それも、北見さんに肩を抱かれ支えられる形で。
「うぅ〜……のみすぎましたぁ〜……」
「そりゃああれだけジョッキ空にしてればそうなるわな」
「だってぇ、おいしーからついぃ……」
そこそこの時刻に飲み会はお開きとなり、飲み直しに行く人や帰る人、皆それぞれに居酒屋を後にした。
そんな中で飲み過ぎた私は、立っていることもままならない状態で、仕方なく北見さんが残り一緒にタクシーを待ってくれているわけだ。
「あ、タクシー来た。ほら、先乗れ」
「あーい……」
やって来たタクシーに彼は先に私を乗せると、続いて同じように乗り込んだ。その手には、私の白いトートバッグが持たれている。
「あれ、きたみさんもこっちですかぁ〜?」
「バカ、俺の家は真逆だろうが。お前一人で乗せて帰れるのか?」
「かえれますよぉ、うんてんしゅさーん、わたしのいえまでぇ」
「運転手さんがお前の家を知るわけないだろ!」
北見さんは私の頭をバシッと叩くと、運転手さんに私の大体の住所を説明する。苦笑いしていた運転手さんはその説明に理解したらしく、車を走らせだした。
「きたみさんって、ちょーなんですかぁ〜?」
「へ?あぁ、下に妹が二人いる」
「でしょうねぇ、めんどーみいいですもんねぇ!」
北見さんは、普段から頼り甲斐のある人。飲み会となれば自然と幹事のような立場になるし、こうして酔っ払いの面倒だって最後までみてくれる。確かに、お兄ちゃんって感じだ。