うそつきは恋のはじまり
「お前は妹って感じだな。たぶん、上は姉ちゃん」
「えっ!なんでわかるんですかー!」
「なんとなく。雰囲気がな」
話しながら、揺れる車内に私はつい、彼の肩に頭を乗せ枕のように寄りかかる。
「ちなみにー、かなたくんはいもうとさんがいるらしーですよぉ」
「彼方くん……ってあぁ、あの彼氏か。しっかりしてそうだしな」
「かおはみたことないんですけどねぇ、きっとかわいいんだろうなぁ〜」
自然と出てきてしまう、彼方くんの話題。それに対し北見さんは呆れたように笑った。
「……お前の頭の中は、いつでも『彼方くん』でいっぱいだな」
「もちろん!だいすきだもーん!」
はしゃぎながら揺られるうちに、車は私の家の近くの細い路地前につく。
「あ、ここでいーです〜。じゃあ、北見さんこれ私のぶん……」
「って、その状態で家まで着けると思ってんのか、酔っ払い。金はいいから早く降りろ」
そして北見さんは私の腕をひきタクシーを降りると、「ちょっと待っててもらっていいですか」と運転手さんに頼み私の家のほうへ歩き出す。
「すみませんねぇ、お手数かけて〜」
「本当だよ。そもそも悪いと思うならそんなになるまで飲むなって話だけど」
「とかいいながら面倒見てくれちゃうんだから〜、北見さんの世話焼きぃ」
「道端に捨てていくぞ?」
酔っ払いのテンションの私は、ふわふわとした様子で北見さんに肩を抱かれて歩く。
すると、自宅である二階建てのアパートの前。街灯の下にひとつ姿が見えた。