うそつきは恋のはじまり



真っ暗な部屋の電気をつけると、彼方くんは適当に靴を脱ぎ家にあがる。そして、奥の部屋にあるベッドに私をボスンッと落とした。その勢いに体は深く沈む。



「わっ!?なにす……」



驚きながら見れは、目の前の彼はベッドに手をつき、組み敷くように上から私を見る。

その目はいつもの穏やかな目とは違う。苛立ったような、真面目な目。男の人の、目。



彼方くん、怒っている……?

なんで、いきなり……はっ!もしかして、北見さんとのこと誤解している!?そうだ、こんな時間に二人で、しかも肩抱かれたりしてっ……。



「か、彼方くん!?あのね、北見さんはそういうのじゃなくてね、ただの先輩で面倒見がいいだけで……」

「ふーん、で?面倒見がいい先輩の『男』と、あんなにべったりして帰って来たんだ?」

「だから、それはその……」



いつもの彼方くんとは違う、棘のある言い方。それほど彼が怒っている証拠だ。


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