うそつきは恋のはじまり

「七恵って、バカだよね」

「え！？」

「ただ送るだけ、なんて男はそうじゃないのに」



その一言とともに、彼方くんは顔を近付けキスをする。

唇を押し当てるような、強いキス。角度を変え、口内を舐めるように、舌を絡める。初めて味わう彼からの激しいキスに、もがくように「ふ、」と声が漏れた。



「……、」



離れた互いの唇には、唾液が伝う。



「男なんて、少しでも気がある相手にならこんなことばっかり考えてる。隙あらば押し倒して、それ以上を狙ってんの」



真面目な瞳と先ほどまで触れていた唇からじんじんと伝わる、彼方くんの熱。



「か、彼方くんも？」

「……七恵には、ね」



私の問いかけ方が少しマヌケに見えたのか、彼方くんはふっと笑う。

今さっきあんなキスをしたとは思えないような、子供のようないたずらさも垣間見えるその笑顔に、思わず心がドキ、と鳴った。