うそつきは恋のはじまり



七恵は、俺との年齢差を物凄く気にしている。

まぁ、最初に10歳も誤魔化していたくらいだ。俺がいくら気にしないように言ったところで『うんわかった』とはいかないのだろう。

確かに俺だって少しは気にする。年上の彼女には、もっと余裕のある大人の男のほうがいいんじゃないかとか、悩んでしまうこともある。



けどそれ以上に年上の女性のほうが、いろいろと悩みは多いらしい。

時々ふたりでいても七恵はひとりであれこれ考えてなにやらよくわからない思考に走ってしまうこともあるようで、そんな七恵もまた可愛いし面白いのだけれと。

悩みや不安を前よりこぼしてくれるようになったのは嬉しいけど……まさか美紅ちゃん相手にまで不安になるとは。

女心は難しいものだと、つくづく思う。





「ただいま」



帰ってきた自宅の重いドアを開けると、広い玄関にはずらりと並んだ靴たち。

祖父母と両親、妹と俺で住む我が家は6人家族。先ほどの美紅ちゃんも嫁にいったとはいえ頻繁に帰ってきているし、わりといつもにぎやかな家だ。



「あれ、お兄ちゃん帰ってきた!今日遅いんじゃなかったの?」



すると一番に声をかけてきたのは、ちょうど風呂からあがったところらしい6歳年下の妹・芽依。

タオルで髪をわしわしと拭きながら、不思議そうにこちらを見る芽依に、俺は靴を脱ぎながら答える。


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