うそつきは恋のはじまり



「彼方のそういう不機嫌な顔は、お父さんそっくりねぇ」

「ちょっと。やめて」

「やめてってどういうことだ!父さんに似るってことはイケメンってことだろうが!喜べ!」



目つきの悪い、いかにも元ヤンキーのような顔をしたどこがイケメンなのか。あの顔と美紅ちゃんが兄妹っていうのもまた、余計イメージがつかない。

先ほど行きあった美紅ちゃんの顔を思い浮かべると、同時に浮かんでくるのはそのあとの七恵の悲しそうな顔。



……確かに、手を離して挙句に『友達』と言ったのは悪かったと思う。

けど、生まれてから何年も毎日一緒にいて世話をしてくれた美紅ちゃんは、俺にとってはただの親戚というよりはもうひとりの母親のようなもの。

母親に彼女と手をつないでいるところを見られて堂々としていられるほどは、俺もまだ大人になっていない。

……って、そこまできちんと話すべきだったかな。



『恥ずかしいんだって!!』



まぁ確かに俺のあの言い方では言葉が足りていないのはわかっている。だからって、疑ったりしないでほしかったけど。


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